腫瘍との取り組み
動物も高齢化に伴い10歳以上の動物の死因は「がん」となっています。それだけにその診断と治療には適切な判断と技術が重要になってきていると思われます。
今まで臨床の現場では沢山のがん症例を見てきましたが手遅れになってしまったり、不適切な処置により根治を逃してしまった例も沢山見てきました。そんな中で院長は「日本獣医がん学会Ⅰ・Ⅱ種認定医」を取得し年々アップデートされてく治療方法を追及しつつ、麻布大学動物病院で腫瘍科専科研修医として修行した8年間の経験を生かし一般病院でも大学病院並みの診断や治療が受けられるよう心がけています。
当院では必要最低限の診断・治療設備は完備しておりますが、病状によってはさらに充実した機器や術後の管理体制が整っている施設例えば、CT・MRI検診センター、大学病院などへの紹介を行い、常に最善の方法を検討し飼い主様に後悔のない治療の選択ができるよう考えて参ります。
「がん」と知らされてあきらめていませんか?
近年、ペットは家族一員として愛情の中で育てられていることにより寿命も延びてきています。そこで、新たに増加してきている病気の一つが「がん」です。
しかし、がん と聞くと目も前が真っ暗になり“もう終わりなんだ”という絶望感に襲われるのは人医の世界でも同様の事です。
でも、ここであきらめないでください!医学の進歩とともに獣医腫瘍学もここ数年で急速に進歩してきています。そして今なお世界中の腫瘍専門医達により更なる試みがなされています。
そんな中、“とりあえず取れるだけ取ってみましょう”と検査もせず安易にメスを入れると逆に酷くしてしまうことも少なくありません。現在では腫瘤があると、これはなんの腫瘍なのか、進行度(ステージ)はどうなのかなどをしっかり診断し、治療目的を明らかにした上で適切な治療法を飼い主さんと共に選択してゆきます。この時、大切なことは飼い主さんに少しの疑問もあってはいけない、ということです。そのため御理解していただくまで、じっくりと話し合うことが大切な事と私は考えております。
診断、治療においては過去に大学病院で8年間、高度医療現場での研修経験を生かし当院でもできる限り当院で提供出来るようにしております。がん治療はその経過観察中に病状が刻々と変化してきますがその対応も大学病院とは違い即座に対応できると思います。
現在、診断にはCT・MRI検査でより精密に行い治療方法の決定や術式、予後予測などを行います。その場合世田谷区深沢8丁目の246号沿いにあるキャミック検診センターにて撮影していただきます。
がん治療の三本柱は1外科 2放射線治療 3化学療法 であります。
- 外科は当院で対応いたしますが内容によってはより高い技術や施設、スタッフ、術後の管理体制などが重要になってくるため状況に応じて、適切な施設をご紹介させていただくことがあります。
- 放射線治療は特殊な施設が必要なため大学病院レベルの治療になるため、適応例でご希望があれば大学病院をご紹介しております。
- 化学療法は長年の経験とエビデンスが認められた新薬も含め当院で対応しております。
臨床腫瘍学において大切なことは検査所見に加え、病気の動物を実際に観て、触って、その子の眼力や表情、反応の程度を確認してはじめて、世界中でたった一つの命のための治療法が決定できるのです。そのため電話やメールでのご相談はしておりませんのであらかじめご了承お願いいたします。
現在、腫瘍で疑問、不安をお持ちの方は一度ご相談にいらしてください。
今後このページでは世界最新の情報を交えてインフォメーションをしてゆく予定でいます。
※当院では、エビデンスの無い民間療法はおすすめしておりません。
最近の抗癌剤治療の動向
今までの抗がん剤は、細胞障害性の薬がメインでがん細胞と同時に正常細胞まで障害を及ぼすために副作用が出やすいものがほとんどでした。しかし、最近は「分子標的薬」といってがん細胞に特徴的な部位のみをターゲットで攻撃するため高い効果が得られるが副作用は少ないという薬が人間界でどんどん開発されつつあります。その中で人間と似ている腫瘍や発生機序が類似した腫瘍では、動物でもこの分子標的薬が有効であることが判って来ました。中でも肥満細胞腫はそのデータも蓄積されてきておりついに日本でも効果があるといわれている分子標的薬のひとつでもある「トセラニブ」が発売される事になりました。この薬を選択するに当たりc-KITの変異の有無を調べますが今後治り難いタイプの肥満細胞腫でも期待できると思います。
また、最近では東京大学で膀胱がんに有効性が期待されるラパチニブの研究が進められておりその期待が高まっています。
また「オプジーボ」は聞いたことがある抗がん剤かと思います。こちらの治験も大学では始められていますので、少しずつですが抗ガン治療は進化しているため今後が期待されます。
犬種別により多い腫瘍
- リンパ腫
- ゴールデンレトリバー・コッカースパニエル・ボクサー
- 肥満細胞種
- パグ・ゴールデンレトリバー・ボストンテリア
- 甲状腺腫瘍
- ビーグル・ゴールデンレトリバー
- 膀胱腫瘍
- シェットランドシープドック・コリー・ビーグル
- 組織球肉腫
- バーニーズマウンテンドック・ゴールデンレトリバー・フラットコーテットレトリバー・ロットワイラー・その他大型犬
- 血管肉腫
- ゴールデンレトリバー・ジャーマンシェパード・イングリッシュセッター・その他大型犬
- 骨肉種
- 大型犬全般
- 肺がん
- パグなどの短頭種
- 鼻腔内腫瘍
- コリーなどの長頭種
もし、腫瘍が見つかったら どう診断を進めていくか?
病気と戦っていくにはまず”病気”という敵がどの様な性質をしていて今後どの様に体を襲撃してくるか、ということを把握しなければなりません。何故なら効果的な攻撃方法、つまり治療法を決定するためです。ここでは適切な治療法を選択するための腫瘍診断の進め方について現在の世界的スタンダードを御紹介します。
腫瘤を発見したらTNM分類いう診断手順に従い進めていきます。
Tとは腫瘍の情報
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【肥満細胞】
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【リンパ腫】
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【扁平上皮癌】
腫瘍の正体がはっきりしない時
無麻酔で行えます。
- 骨生検針
- Tru-cut生検針
- ジャムシディー骨生検針
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【下顎先端】
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【上腕骨】
それぞれの骨が溶解
Nとは所属リンパ節への浸潤の有無
Mとは転移があるかどうか
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【肺転移疑い】
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【肝転移疑い】
その他
※以上の様に診断を進めていき腫瘍の種類とその進行度が明確になってはじめて、有効的な治療法のオプションが挙げられ、飼い主さんと治療法を決定してゆきます。